2000年5月号:PDFの奨め



 そろそろ新年度のプロジェクトも動き出したようです。
 今年の仕事環境はどうなるでしょうか?ますます情報化が進展することには間違いのないところですが、私たちにとっては、どこまで進むかが大きな問題です。
#というのは、どうしてもクライアントのレベルに合わせて進めなければならないからです。

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 昔の仕事の成果は基本的には報告書でした。最近は契約書にデータの引き渡しを明記しているところも増えてきました。私自身はこれは本来の契約業務とは違うと考えています。というのは、データを渡すと言うことはいずれ何らかの形で修正されることを前提としているからです。最も問題なのは、苦労して入力・作成データがこの後どのような形で使われるかコントロールしようがないからです。残念ながら、私たちの仕事において、調査過程での成果品の質が問われることは全くありません。つまり、美しくその後の加工が容易なデータ作成を調査に併せて進めているのは私たちの独自の作業過程であって、将来不本意な転用をするかもしれないことのために作業を行っているのではないのです。
 ただ、文章データはOCRソフトもありますし、音声入力ソフトもあるわけですから、今は欲しいと言われれば協力するのにはやぶさかではありませんが...。
 それにしても、以前ここで書いたように、「印刷を別会社に発注するから、データだけを渡して欲しい」なんていうのは、私からすれば不当請求ですし、第一、成果に責任が持てないような関わり方が本来できるはずもありません。私たちの仕事は、単に調査をするだけで、その最終成果をどのようにまとめようが、どのようにデータを使おうが、発注者の勝手だ、とでも言うんでしょうか?こういうことをシャアシャアと口にする神経を、私は今でも理解できません。
 最近は、「WebDataとして欲しい」というのも出てきました。それ自体、仕事としては大したことないんですが...。何となく釈然としない思いもあることは確かです。私たちの仕事は「意気に感じて」進められる部分もかなりあります。契約書に書いてあるないではなく、より良い仕事を共に進める仲間というような気持ちで接してくれれば、労力を惜しまず動こうという気分にもなりますし、単に業者だと思われているのであれば、そのようにも動くことになるでしょう。
#最近、契約の至るまでの条件整理がやけにギスギスしてきていて、私たちが欲しいと思っているこの「信頼関係」の構築が本当に難しくなってきているのです。

 でも、最近、こんなことに抵抗するのはバカバカしくなってきました。どこもかしこも財源・資金が厳しいことだし、その中できれい印刷したいということならせいぜい協力させていただこうという気分になってきています。いずれ、私たちがやってきた仕事の大半は、組織の中で自らがこなしていかなければならない仕事になるでしょうから、今から、そのための訓練をしていってもらうのも良いことかもしれないと思うからです。

 ただ、データを渡すと言っても、いくつかの方法・考え方があります。

1)「ワードで下さい」なんて言わないで
 「ワードで下さい」と言われることもあります。これだけはやめて下さい。少なくとも私のところでは、様々なアウトプットに対応するために、ワードよりはるかに高機能なPagemakerを導入しているのですから、それを今更低機能なワードで成果を納めたくはありません(別費用を考えて下さるんなら別ですけど(^_^;))。これだけはわかって下さい。「テキストで渡しますから、どうぞ後は自由にご活用下さい。」ということにしてもらえないでしょうか?
 また、テキストは仮にワードでいけたとしても画像はどうするんでしょうか?私のところでは「Canvas」「Illustrator」「Photoshop」やら、3次元では「FormZ」やら、いろいろありますが...。
 つまり言いたいことは、データをさしあげるのは結構ですが、データをお渡しするためには、それなりの条件を整えるとともに、自らの環境整備や自ら努力もして欲しいということです。

2)画像の渡し方は簡単ではないんです
 組織というのはおかしなところがあるもので、大がかりなGIS(更新の手間だけでもどうするんでしょう)やパソコンに最初からインストールされているようなお手軽なソフトには投資するようですが、システムとして必要なソフト環境を構築していくような発想がなかったりします。
 ですから、どんな人でも開けるデータに変換して渡すことになるのですが、それだって本当は使い道がわからなければ渡しようがないものなんです。

 しかし、これだけパソコン環境が一般的になってくると、私たちには信じられないような使い方をしているユーザーもいるもんです。事前に何らかのデータがあるからといっても、それを使っての仕事は決して簡単になるもんでもありませんし、そういう人が考えるような仕事の進め方が最も優れているわけではありません。このあたりの問題については、現実には、ますます混乱の度合いが深まっているように思います。
 手軽にできるようになったために、以前は一部専門家の参加がなければできなかった仕事が担当者だけの作業で信じられないような不出来な成果でも、そのまま使われてしまっていくことが最近よく見られます。まあ、こういうことは過渡期として認めましょう。しかし、仕事の質は明らかに低下していることはきちんと認識していて欲しいものです。また、仕事の進め方もよく理解していないまま、いい加減な仕様で発注されることも多くなりました。困ったことだと思っています。

3)PDFの奨め
 こういう問題を明確にしていく方向の一つがPDFだと思っています。
 ご存じとは思いますが、PDFファイル形式はAdbe社が開発したファイル形式で、恐らくは出版の世界の様式統一化の戦略を持ったものに違いありませんが、でもまあ、良いものであることは認めましょう(どこかのM社が行っているような、悪貨が良貨を駆逐するような強引なものではありません)。
 PDFファイルの優れているのは、

 これからのデータ渡しの最も優れた方法ではないでしょうか?成果品も印刷物としての報告書だけではなく、PDFファイルを条件にしていけば良いのです。そうすれば、報告書は紙で出力しなくても読めますし、紙での印刷もそのまま可能になります。画像を使いたい人は、画面のハードコピーをして使えばよいのです。

 Adobe社のサイトからはAcrobatReaderが無料で入手できるのですから、もっともっと広く使われて欲しいものです。
#いずれそうなっていくでしょうけど、それは一体いつのことでしょうか?

2000年(平成12年)6月2日 鹿児島への機中にて

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